局地的食文化 〜神戸で味わう「味噌ダレ餃子」〜

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神戸市(兵庫県)
局地的食文化 〜神戸で味わう「味噌ダレ餃子」〜

この記事は、2021年12月に行なった取材をもとに制作しています。マスクを外しての写真も一部撮影しておりますが、取材は原則、当時、兵庫県下で推奨されていた新型コロナウイルス感染症対策(マスク着用など)を実施して行ないました。

かの『美味しんぼ』の山岡士郎氏も言った。「餃子はそれだけで完全食になり得る」

皮は小麦粉で炭水化物、中の餡はひき肉と野菜。だから餃子はそれだけで必要な栄養分をほとんど取ることができる完全食なのだと──

冷凍餃子でお馴染みの、味の素(株)も「For ATHLETE(フォーアスリート)ギョーザ」というものをスポーツ選手向けに開発し、真面目に一流アスリートたちをサポートしているくらい、餃子はスーパーフードなのである。

それにしても一旦「食べたい!」スイッチが入ると、餃子はその衝動にあらがえない飯テロ性が高い食べ物だと今回思い知った。それは取材準備でネットに投稿された幾多の餃子を見ているうちに辛抱たまらなくなり、そのまま冷凍餃子を焼き始めてしまった、または思ったけど深夜ゆえ、かろうじて踏みとどまった経験が何度もあったから(笑)

だから、この記事を読んでいる途中でそういう衝動に駆られても、それはあなたが食いしん坊だからじゃない、餃子のせいである。

老舗餃子店における「掟」

実は神戸には餃子専門店がたくさんある。そこでは酢醤油じゃなくて昔から「味噌ダレ」で食べるのが一般的だ。これは意外に隣の大阪でも知らない人が多くて、すごく局地的な食文化なのだと思う。
(でも不思議なことに私も含め神戸の人は、家で食べる時は酢醤油派が多い。それは地元のスーパーでも味噌ダレがそんなに売ってないからだと私は分析している)

神戸には、「赤萬」「ひょうたん」のような、いわゆる「老舗餃子屋」というものがいくつも存在していて、お店の前に行列があるのも普通だ。そんな老舗は昔ながらの狭い店舗が多くいつも混んでいるから、お客さんも暗黙のルールを守って黙々と食べているイメージがある。

2人前以上を注文して(この掟を持つお店が多い)、食べたらダラダラ喋らず席を立つ。彼らからは、「私、心得てます」って空気をいつも感じるものだ。

遡ること20数年前。当時OLだった私は、上司に神戸の南京町の路地にある「ぎょうざ大学」によく連れて行ってもらった。“マイファースト餃子専門店”だ。神戸のサラリーマンは、お気に入り餃子店の一つや二つ持っていると思うけれど、「ぎょうざ大学」のある元町はその激戦区と言える。

先日久しぶりに訪れたら、女子高生が外に並んでいた。当時は、壁にビキニ姿のお姉さんがビールジョッキ片手に微笑むポスターがババンと貼ってあって(最近見ないよね)、仕事帰りのサラリーマンの熱気で溢れているお店だった。だから私の中で餃子は、サラリーマンが一日の疲れとともにビールで流し込むもの、っていうイメージが強い。

ビール以外は追加注文ができない“鉄の掟”があったけど、それも健在のようだった。そして昔と変わらない「味噌ダレ調合レシピ」が今も壁に……
OL時代、これを見ながら“マイ味噌ダレ”を小皿で調合し、焼き立ての餃子が運ばれてくるのをワクワクして待っていた。そんな経験をしたものだから、「味噌ダレは自分の好きな塩梅で調合するもの」との刷り込みがある。

それを強く実感したのが今回の取材。取材の話は今から始まる(笑)

静かなる「味噌ダレ調合バトル」

<font color='blue' size='2'>店舗は海には面してないが、外にテラス席もあっておシャレな外観</font>
店舗は海には面してないが、外にテラス席もあっておシャレな外観
今回訪れたのは、「ぎょうざの一休 神戸モザイク店」。私が一番長く働いた街、JR神戸駅海側の、神戸港が一望できる商業施設「umieモザイク」にある。

いい意味で老舗餃子店のような「掟」が無いので、海外や他府県から来た選手にも気軽に行ってもらえそう。餃子の追加注文だってタッチパネルでなんぼでもできる! なによりモザイクは、港町神戸がバッチリ堪能できるロケーションでもあるからオススメなのだ。

取材には「ワールドマスターズゲームズ関西2021関西組織委員会」前・広報担当の吉田武司氏に同行してもらった。ゴトスポを陰から支えた人物で、神戸市の職員でもある。そして彼はこの局地的な食文化、「神戸の味噌ダレ餃子」を世に広めたい野望を密かに持っていて、取材の相棒としても適任なのであった。
<font color='blue' size='2'>「神戸式!味噌だれ餃子」の看板。お昼も営業している</font>
「神戸式!味噌だれ餃子」の看板。お昼も営業している
私たちは夕方6時ごろ「一休」を訪れた。タッチパネルで餃子を注文して待っていると、吉田氏が嬉々として味噌ダレを小皿に入れ、続いて2枚目の小皿にお酢と醤油を注いだ。
<font color='blue' size='2'>小皿2枚に、別々に味噌ダレと醤油を注ぐ吉田氏(違うんだよなあ……)</font>
小皿2枚に、別々に味噌ダレと醤油を注ぐ吉田氏(違うんだよなあ……)
「え? 吉田さん何してるんデスか? お皿で調合するんですよ」とワタシ。

「え、イヤイヤ、別々に味わうんですよ」と吉田氏。

ここに来るまで和気あいあいと「味噌ダレ餃子」と「神戸の未来」について語り合ってきた二人の空間が、この瞬間少しピリついた。
<font color='blue' size='2'>手前、タレが調合された私の小皿と、奥は二枚に分けられた吉田氏の小皿</font>
手前、タレが調合された私の小皿と、奥は二枚に分けられた吉田氏の小皿
私には「ぎょうざ大学」で培った、鳥類ばりの「タレはお皿で調合」の刷り込みが存在する。(コチトラ30年、神戸の味噌ダレ餃子を食べてきたんだい!)

ちょうどその時、お店のお姉さんがテーブルにやってきた。

「そうだ、お姉さんに食べ方を聞いてみましょうよ!」とワタシ。

「あのー、タレはどうやって食べればいいですか?」(ホントはお姉さんが生まれる前から味噌ダレで餃子食べてますけどね!)

「えっと、味噌ダレと醤油を別々に入れてもらって…」

……え?

お姉さんは吉田氏側の人間だった。「お好みで調合してください」という言葉をもらってギャフンと言わせたかったのに、私がギャフンと言わされてしまった。

しかし吉田氏は、善良な市民に対してマウントを取るようなことはせず、「いや~これは有田さん(ゴトスポディレクター)にも、どっちかぜひ確認したいなあ。ハハハ」と、私のピリつき具合を察してか第三者を登場させ、その場を収めようとしてくれた。(マジで有田さんはどっち派⁉)

いや、私だっていい大人である。タレの調合でそこまでとやかく言うつもりはない(言うとるやないか)。

まあもういいさ。どう食べても「一休」の餃子は間違いなく美味しかったのだから。

神戸の味噌ダレ餃子よ、永遠なれ

<font color='blue' size='2'>自然に笑顔がこぼれる吉田氏</font>
自然に笑顔がこぼれる吉田氏
実はここに来る前、1軒目でも餃子とエビチリ、春巻きにビール2杯とハイボールを胃袋に入れてきたのに、餃子を前にした吉田氏はこの笑顔である。

周囲からも「美味しそうに食べるね」と言われるらしく、「祖父が初めて撮ったのは僕がコロッケを食べる動画だったんですよ」というエピソードも飛び出すほど、飲食店取材には格好の被写体だ。
<font color='blue' size='2'>味噌ダレ調合バトルには敗れたが、餃子の前では笑顔のワタシ</font>
味噌ダレ調合バトルには敗れたが、餃子の前では笑顔のワタシ
その後も、餃子とお酒を追加注文し(取材どこいった)、神戸の未来を語り(あんま覚えてないけど笑)楽しい時間を過ごした。餃子とお酒の相性はやっぱりサイコーで、私は少し饒舌になったかもしれなかった。

さて、原稿を書き終わって、今また餃子が食べたくなっている自分がいる。これって自分の原稿の飯テロに……

いまあなたが餃子屋さんに繰り出そうと思ったか、冷凍餃子を焼き始めたか、それを知るすべはないけれど。これを機に「神戸の味噌ダレ餃子」を知ってもらえたら嬉しいかぎりです。

……さ、餃子焼こ(笑)
■ぎょうざの一休 神戸モザイク店
所在地:兵庫県神戸市中央区東川崎町1-6-1 umieモザイク AIC 1F
TEL:078-977-9009
アクセス:JR「神戸駅」、神戸市営地下鉄「ハーバーランド駅」から徒歩約5分
     阪急電車・阪神電車「高速神戸」駅から徒歩約10分
営業時間:平 日 11:00-15:00 14:30 LO
         17:00-22:00 21:00 LO
     土日祝 11:00-22:00 21:00 LO

※コロナ禍でお店の営業時間帯等が変則的になっている場合があります。営業時間の最新情報は神戸ハーバーランド umie モザイク ホームページをご覧ください。

近隣で開催される
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2021関西の競技

上野 優子
投稿者紹介

上野 優子

神戸市在住の取材・インタビューライター
神戸のタウン情報誌取材記者。好奇心旺盛、心のままに自分の視点で言葉を紡ぎます。趣味のソフトバレーボールのポジションはアタッカー。最近キックボクシングジムに通い始め「強くなりたい」と密かに思う。プリンと大野智が好き。