安達 智 さん

未知の山野を駆ける冒険レース 奥深い魅力にはまる研究者

兵庫県神戸市の再度公園・森の広場で開催された「第4回全日本ミドルディスタンスオリエンテーリング大会/関西マスターズスポーツフェスティバル2015/JOA公認(カテゴリA)再度山オリエンテーリング大会兼日本オリエンテーリング選手権」に参加した安達さんに競技の魅力を伺った。
オリエンテーリング

オリエンテーリングをご存知ですか? 参加資格年齢および出場クラスは幅広く設定されています。舞台は大自然。開催者が準備する「専用の地図」と「コンパス(持参も可)」を使い、地図上に○で示されたチェックポイントである「コントロール」地点を順番通りに通過し、フィニッシュまでの所要時間を競います。年齢による体の衰えを、それまで培った経験で補える、まさに「生涯スポーツ」と言えます。19世紀中頃、北欧での軍のトレーニングが原型とされ「方向を定める」が競技名の由来。欧州で急速に広がり、日本では1966年に日本オリエンテーリング委員会(現協会)が設立されています。

コンパス片手に、未知の冒険

「年齢制限なし経験の少ない男子」が対象のMBクラス。コンパス、そして5mの等高線間隔が入る縮尺1/7,500のコース地図を握りしめ、安達さんがスタートを切った。舞台はアカマツ林やスギが見守る紅葉の再度山。化学メーカーで医薬品の開発者として多忙な日々を送る42歳は、滑りやすい斜面が特徴の全長1.9km、高低差130m、そして「12のコントロール」を回る〝冒険レース〟に挑んだ。競技を始めて1年半。走ることは好きだったが、社会人になってから運動とは疎遠になっていた。運動意欲がわいた時、オリエンテーリングに偶然、出会った。「山の中を走るなんて、楽しそう…」。今では月1度の大会出場が、心身を癒やす貴重な時間として、生活のリズムになっている。

年齢に応じたコース攻略

けが防止のため長袖長ズボンが推奨されている以外は、必要な用具はシューズと時計のみ。コンパスは大会主催者から借りられるが、〝相棒〟を持参する選手も多い。「経験豊富な上級クラスではこだわりも強いでしょうが、私にはこれで十分ですよ」と、シンプルな愛用コンパスを見せてくれた。一般的に参加費も低額。経済的負担も少なく、月1度の大会出場も長く続けられる。大自然での走りを、コントロールまでの最短ルートを、高低差の攻略を満喫するなど楽しみ方は人それぞれ。
26分09秒でゴールし2位入賞。表彰台で授与された銀メダルを手に、「あのコースを選択するべきだった、次に出場する時はこう攻略しよう、と考えることが楽しいですね。経験を積み、次の大会で良い結果が出ることが最大の喜びです」と笑顔を浮かべた。スポーツの世界では年齢の衰えが成績ダウンを招くことが一般的だが、オリエンテーリングは経験が勝敗に大きく影響する。小学生から最高齢85歳の選手が参加した今大会。安達さんは「年齢に応じた戦略がある生涯スポーツで、続けられる限りは挑みます」と充実の表情を見せた。

安達さんに聞く

オリエンテーリングの魅力は?

安達

自然の中を走ることは気持ちが良く、上級者になると道がないようなところも走ります。経験者の方からお話を聞くことも貴重です。地図から、フィニッシュまでの最短ルートを想像することも魅力のひとつです。

当面の目標は?

安達

色々な技術がありますので、少しでも多く技術を磨いて、ワンランク上で通用するように挑戦していきたいです。大会に出場することで経験を積むことができます。関西圏の大会を中心に参加しています。

ワールドマスターズゲームズ2021関西について一言

安達

オリエンテーリングが競技種目に入っていることは知っています。今は中級クラスですが、これからも色んな大会に出場して経験を積み、上級クラスを目指します。同世代にも凄い選手が揃っており、楽しみです。

取材こぼれ話

競技後、安達さんと他の参加者による〝即席のミニ反省会〟が始まった。年齢も性別も違う初対面の2人が、出場したレースの地図を手に、「私も同じ地点で悩んだのよね!」「等高線をより正確に把握することが最短ルートの鍵でしたね」と徐々に会話が弾んでゆく。未知の山野を駆ける冒険レースは個々の体力や経験により、最善ルートはそれぞれ違うのだろう。競技後の反省会もまた、オリエンテーリングならではの魅力に映った。